今回は発酵蔵見学ということで、北海道旭川市にある『高砂酒造』さんを見学することに。
高砂酒造といえば『国士無双』!
「ここにしかないモノ」をモットーに創業 120 年以上の超老舗の酒蔵さん。
アクセスは宮下通り 17 丁目ということ旭川駅から車で 5 分ほど、徒歩でも 15 分ほどにあり、わりと気軽に立ち寄れる場所である。
先にご注意いただきたいのが、工場見学には事前の予約が必要なところ。
見学開始時間は 10:00 もしくは 15:00 の一日 2 回、3 日前までに予約が必要で定員も 10名までとなっている。
この日は平日の 15 時の予約だったので 4 名の方と見学となったが、土日や祭日は混み合うようなので早い段階での予約がおすすめである。
もうひとつ、こだわりのある酒蔵さんは『寒仕込み』という言葉があるように日本酒は寒い時期(11 月~3 月)に仕込みが行われることが多く、高砂酒造さんでも『寒仕込み』をされていて、私が訪ねた 3 月末日はちょうど仕込みが終わっているタイミングでした。LIVE で仕込みの様子は見られない・・やや残念
時間はちょうど15:00。
すると、高砂と書かれた濃紺の高貴なハッピを纏った清潔感のあるダンディな男性が笑顔で登場、案内役の廣野さんだ。
のちのち話を聞くと執行役員の方ということでした。(びっくり)
廣野さんからのご挨拶と注意事項の説明で見学スタート。ワクワクである。
その直後に、お酒造りは鉄筋の蔵で造られるということで出発地点の木造の蔵から出てすぐの公道を渡り、鉄筋の蔵に移動。
話によると、旭川は昔から国内でも有数の鉄筋建築技術が進んだ地だという。
というのも街の開発にソ連など北部の国からの攻撃に備える為、壊れやすい木造ではなく、頑丈な鉄筋での建築が進んだとのこと。 タイムリーな話題にここでもびっくり。
鉄筋の蔵に入ると早速、お酒の良い(酔い)香り!きっと良い麹菌が漂っているのだろうと勝手に想像しながら、ビニールのシューズカバーを装着して蔵の 2 階へ
まず見学させていただいたのが
お米を蒸す工程(蒸米)から米麹を作るまでの流れ
ご存じの方も多いと思いますが、
日本酒のランクを決めるひとつの基準・味わいを決める基準として『精米歩合』というものがある。
簡単に説明しますと玄米を削った割合のことで食用の白米は 10%削るので精米歩合 90%。
精米歩合 70%以下を「本醸造酒」、60%以下は「吟醸酒」、50%以下は「大吟醸酒」と規定されており、これは米の表層部分にある、たんぱく質や脂質、でんぷんなどが、雑味になってしまいお酒の香りに影響を及ぼす為に精米される。
素人考えでは、たんぱく質や脂質なども貴重な栄養では!?と思ってしまうが、
よく考えれば酒は美味い方が良いし、香りが良い方が美味い。と気づく。
栄養はお酒のアテから取り入れることとしよう。(ひとり言)
ちなみに、精米されて出た粉(削られた部分)も破棄されるのではなく米粉として販売されたり、
家畜のエサに加工されたりなど、再利用されているとのことでした。
さすが高砂酒造さん地球にやさしいこともしっかりされている。
そんな説明を受けているとすっかり高砂酒造さんのファンになっている私がここにいることを確認。
その他にもお米の固さやコンベヤーを使った工程の説明を受けながら学びの時間は過ぎてゆく。なるほど、なるほどの連続。
そこで登場してきたのが秘密の部屋
入口に『麹室』の札が立てかけられ、頑丈な鍵で完全ロックされています。更に『土足厳禁』の注意喚起。
その風貌からもまさに秘密基地。
発酵料理士協会の私は心の中で 『キターーー発酵!キターーーーーー』 と叫んでいた。
外側から覗き見るのみで、入室することは、もちろんできませんでしたが、麹菌の振り方や寝ずの作業についてなど
ここでしか聞けないお話を聞くことができた。
高砂酒造さんの心臓部を見たという高揚感を抑えることに必至だった。
そして次に現れたのが7000リットル以上入る青色の大きなタンクが数十タンク!
これぞ酒蔵という存在感(単位はタンクなのか?本なのか?)
ここで、できた麹と蒸米と地下水をタンクに入れ、温度管理をしながら発酵させ、もろみを作るとのこと。
発酵バンザイー!ハイテンションもマックスです。
その後
絞りの作業場を見学。まるで巨大なアコーディオンのような搾り機でもろみを搾ると日本酒の誕生。
ここで、できた搾りカスが『酒粕』だ。当たり前ではあるが、搾る酒により酒粕の味も変わるとのこと。 売店で販売されていた大吟醸の酒粕が一番高かったことを思い出す。
次は貯蔵庫へ
そこに登場したのが、今度は緑色の大きなタンクがズラリ、
おっとここは寒い!ここだけ温度がグッと落ちている。ついつい首が縮む。
これは冷蔵庫状態と思い、『冷房効いてますねー 温度管理大変ですねー』とたずねると廣野さんの答えは・・・
『ここは暖房も冷房も一切使っておりません!』という、まさかの回答。
えっ!?旭川といえば夏は 30℃、冬は-20℃ではあーりませんか!?
どうやって温度管理をされているの?という誰もが沸く疑問が頭いっぱいに。
ポカンとした表情を察していただいたのか次の瞬間に納得できる回答が『答えは地下水と建築構造です。
地下水は酒造りにも使われますが、夏は冷房の代わりに部屋を冷まし、鉄筋の建築構造により真冬もシバれない(※シバれるとは北海道弁、寒くなりすぎること)ようになっているので暖房も冷房も必要がないのです。』とのこと。(本日一番のびっくり)
更には、地下水は地域の命の水、“大雪山の水”大雪山からの水は蔵に届くまで 50 年もかかるとのこと。(ここでもびっくり)
50 年前の綺麗な美味しい水で作られた日本酒ってどこか神秘的。
冷えた美味しい地下水と先人たちの技とたゆまぬ努力で作られたお酒。
美味いに決っています。あー飲みたいなぁ~と喉が悲鳴をあげる。
時が経つのは早いもの時計を見ると
16:20
そんなタイミングで最後のお楽しみの試飲のお時間。
この日は大吟醸や純米大吟醸など 3 種を試飲。プラス生きた甘酒もいただきました。
壮大なストーリーを感じたあとのこの一杯!格別だった。周りの見学の方達もテレビ CM に出られるくらいの美味いの表情。
この貴重な体験が無料!(最後のびっくり)
かなり申し訳ない気もして、多めのお土産を購入。
おすすめは
断トツで 酒(粕)×鮭ジャーキー432円 噛むとほのかにお酒の香りがして、お酒が進むこと間違いなし。
更にまあまあな本数が入っており鮭とばよりも高コスパ!次回は 3袋購入を決めてます。
大満足の見学でした。
なにより、案内役の廣野さんから伝わるお酒造りの情熱がもの凄く、そして心地良かった。
今回取り上げた話題は説明いただいたお話のほんの一部、紹介していないタメになるお話
もまだまだありましたので
是非、旭川市、高砂酒造さん工場見学を旅の旅程に入れていただければ幸いです。
試飲でほろ酔いになり、帰りの JR でもう一杯飲んでしまったことは
内緒でお願いします。ご勘弁ください。
今回お邪魔しました
高砂酒造ホームページはこちら
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記事を書いた人
発酵料理士協会 事務局長 橋本雅也